十勝の酒造りの歴史は、1789年頃に始まったと伝えられていますが、1981年を最後に途絶えました。しかし2012年、「とかち酒文化再現プロジェクト」によって途絶えていた十勝の地酒が復活し、その地酒は「十勝晴れ」と名付けられました。このプロジェクトの事務局を担っている帯広信用金庫の太田さんにお話を伺いました。
とかち酒文化再現プロジェクト
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プロジェクトの始動
プロジェクトの始動 十勝は食の宝庫です。おいしい食べものがたくさんある地域で、よりおいしく食べる、より食を楽しんでもらうためには「お酒」の存在というのは非常に重要だと思います。十勝にはワインや焼酎はありましたが、残念ながら日本酒は途絶えていたので、日本酒を復活させることを掲げて「とかち酒文化再現プロジェクト」をスタートしました。
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課題は十勝での酒米製造
課題は十勝での酒米製造 このプロジェクトの最初の課題は、十勝で酒米がうまく育つかどうか、ということでした。食の宝庫とはいっても十勝は畑作地帯であり、米づくりを行う農家はごくわずか。そんななか酒米づくりに手を挙げていただいたのが、音更町・十勝川温泉地区の白木さんでした。白木さんの努力のおかげもあって、2011年の初めての米作りは予想以上の豊作となり、関係者一同でホッとしたことを覚えています。
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地酒復活だけではない、プロジェクトの目的
地酒復活だけではない、プロジェクトの目的 日本酒を復活させる、というわかりやすい目標に加えて、もう一つ重要なことは「農商工・産学官金」連携の取り組みであることです。地域のさまざまな課題をどのように解決していくか。単独での取り組みには限界がありますので、関係者が連携して解決に結びつける、そのためのシンボリックな活動となるよう意識しました。
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地酒と観光、地元の方とのかかわり
地酒と観光、地元の方とのかかわり 全国各地を訪問したとき、その地域のお酒と料理を楽しめるかどうかは、地域の活性化や魅力アップの点からとても重要なことです。十勝を訪れる方々をもてなす十勝の食に、日本酒も加わればさらに喜んでもらえるのではないか、という関係者の思いが「十勝晴れ」誕生のきっかけです。また、地元の方に楽しんでもらいたいという思いから、季節限定の生搾りや購入しやすい純米酒などラインナップの充実にも取り組みました。
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真の十勝のお酒「十勝晴れ」の進化と地域への誇り
真の十勝のお酒「十勝晴れ」の進化と地域への誇り 十勝は何と言っても自然に恵まれた地域です。ここで採れた酒米、それと清らかな水。そうしたものが日本酒の味にも反映されると思っています。「十勝晴れ」が誕生したのが2012年ですが、4回目に造った2015年の春に初めて札幌国税局主催の2014年度新種鑑評会で金賞をいただきました。その時の関係者の喜びというものは、今でも鮮明に記憶に残っています。
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「十勝晴れ」の今
「十勝晴れ」の今 活動当初から小樽の酒造メーカーに醸造を依頼していましたが、2022年秋から帯広畜産大学構内の上川大雪酒造の酒蔵「碧雲蔵」にお願いしています。十勝の米と水の「十勝晴れ」、そこに地元の蔵も加わることとなり、本当の意味で「十勝のお酒」にすることができました。「十勝晴れ」を含めて地元の酒蔵のお酒がどのように展開されていくか。十勝の食の魅力を上げてくれることを期待しています。
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帯広信用金庫の願い~地域産業の振興と十勝の魅力向上~
帯広信用金庫の願い~地域産業の振興と十勝の魅力向上~ 帯広信用金庫としては、十勝がより魅力的な地域になることを望んでいます。そのための地域産業の振興、そこには十勝の食の魅力を上げるということも重要なポイントのひとつです。このプロジェクトが日本酒造りの復活にとどまらず、十勝の明るい未来につながるよう、様々な取り組みに発展することを願っています。
帯広信用金庫 地域経営サポート部 太田智也さん