十勝では、地元産食材を使用した地ビール製造が熱を帯びつつあります。帯広市にあるHOTEL NUPKAでは、十勝産大麦麦芽100%のビール「旅のはじまりのビール」や夜の街を走る馬車に乗ってお酒が飲める「馬車BAR」で十勝のお酒と馬文化で観光を盛り上げます。そんなHOTEL NUPKAの坂口さんにお話を伺っています。
HOTEL NUPKA
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十勝の地酒。地元の味を称えて
十勝の地酒。地元の味を称えて 他所からお客様が帯広に来られたとき、夜にはやはりその土地の飲み物で「乾杯」してもらいたい、そういう願いで「旅のはじまりのビール」を作りました。 ブルワリーの町として知られるアメリカのポートランド(オレゴン州)では、お酒だけではなく、チェーンではないオリジナリティのあるコーヒーを焙煎する人やチョコレートを作るお店など、その土地のひととものがしっかりと根付いている街です。地元の人も旅行者も、皆さんがその土地の食べ物、飲み物を楽しみます。オリジナリティがあることはとてもステキなことと思いました。でも十勝は農業が盛んなのに、ほとんどの農産物は外へ出て行ってしまって、地元に残ることは少ないですよね。なので、十勝に根差したお酒として、十勝で育った麦でビールを造り、そのビールで十勝に来た人を歓迎したいと思ったんです。
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十勝産大麦麦芽100%で醸す旅のはじまりのビール
十勝産大麦麦芽100%で醸す旅のはじまりのビール 士幌町にビールの原料となる大麦を研究されている「士幌地ビール研究会」という10数名の団体があり、そこの大麦を使用して製造しています。彼らは「ビールを作りたい」という思いから10年以上前から大麦製造をしていましたが、十勝で麦芽を製造できる場所がないという理由から、そのほとんどを廃棄していた状況でした。また、国内で製造、販売しているビールのほとんどは輸入の麦芽を使用しています。ですが、「旅のはじまりのビール」は十勝産大麦麦芽100%。唯一無二で、他にはなかなかないものと自負しています。
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何杯でも飲んでもらえるビールを
何杯でも飲んでもらえるビールを 十勝産大麦麦芽を使用しているビールなのでその麦芽の味が綺麗に出るよう、また、十勝のおいしい食材を邪魔しないで何杯でも飲めるようなものをつくりたいという思いがありました。クラフトビールといえばホップがガツンと香るとかフルーティーとか、個性が強い印象がありますが、ずっとみんなに愛される味になってほしいと思っています。旅のはじまりのビールは「飲みつづけられる」を追求しているので、みんなが飲める、何杯でも飲めるビールです。
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地元の味とのベストなペアリング
地元の味とのベストなペアリング おつまみとしておススメするのは「ヌプカ餃子」です。ホテルヌプカではチーズの入った鶏肉の餃子や自家製ラー油を添えた豚餃子を提供し、好評をいただいています。 ほかにも無肥料無農薬のジャガイモのポテトサラダやソーセージ、チーズなど、十勝素材のビールに合うおつまみがたくさんあります。特にチーズは工房がたくさんできて、種類も豊富になり、切磋琢磨する中で、味のレベルもどんどん上がっています。ビールをおいしく飲むことで、さまざまな広がりが見えてきます。
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食べ物がベースになった豊かな場所、十勝
食べ物がベースになった豊かな場所、十勝 十勝はとても豊かで住みやすい地域だと思います。東京や海外でも暮らしましたが、気候や水、空気、太陽、土…、自然に恵まれるということはとても素晴らしいことであり、稀なことです。それは自然の恵みを利用して農産物を生産する、つまり食べ物がベースになっているからではないでしょうか。ずっと十勝に暮らしていると当たり前になってしまいますが、出張で訪れた方が「十勝に転勤希望を出しました」みたいな方もいらっしゃるんです。他所から訪れてた人に気づかされることもあるくらい、十勝は豊かで人が来たくなるような、魅力あふれる街だと思っています。
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帯広の夜。馬車とお酒で繋がる人々の物語
帯広の夜。馬車とお酒で繋がる人々の物語 アメリカのフォートワースという街があって、そこはカウボーイの街で日常的に馬が走っているんです。子供達にとってもカウボーイはなりたい職業の一つになっています。当時、小さい頃から目にする環境があるとその職業がなりたい職業になり得るんだ、と感心したのを覚えています。帯広には「ばんえい競馬」という世界唯一の稀少な資源がありますが、ばん馬は競馬場の中にいて、普段はなかなか外では人目に触れる機会がありません。このまちには馬がたくさん住んでいるということを知って欲しくて最初は馬で仕事に通う…なんてことも考えましたが、馬車を走らせたい方との出会いから、人のいる夜に走らせることになった、というのが馬車BARが誕生した経緯です。
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お酒と十勝観光の結びつき
お酒と十勝観光の結びつき お酒を飲むと必然的に宿泊が伴うので、観光にとってすごく大事な要素なんじゃないかと思っています。経済効果という意味では宿泊がとても重要です。十勝は車ありきの土地ではありますが、今後、移動手段も変わっていくと思います。 十勝にはビールの他にも日本酒やワイン、焼酎など、地元のお酒が豊富な地域です。多くの観光客や出張で訪れる人、転勤して間もない人、生まれてからずっと帯広に住んでいる人、さまざまな人間模様が交錯する夜の帯広で、お酒が懸け橋となって人と人がつながっていく。とても素敵なことだと思います。
HOTEL NUPKA 坂口琴美さん