「ワイン城」で親しまれる池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、現存する北海道のワイナリーで最古の歴史を持ちます。現在、十勝には4つのワイナリーが存在しますが、十勝におけるワイン製造のトップランナーとして走ってきた十勝ワインの一戸竜也さんにお話を伺いました。
十勝ワイン
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設立60年、十勝ワインの誕生
設立60年、十勝ワインの誕生 十勝ワインが設立して今年で60周年を迎えます。設立の経緯は昭和20年代の後半に十勝沖地震が発生し、その直後に十勝が冷害に遭い、農作物が凶作だったことがありました。池田町の基幹産業は農業で、町の財政も壊滅状態に陥りひっ迫し、赤字再建団体に指定されました。 当時の町長が「野山には山ぶどうが自生している。冷害の影響を受けてもその山ぶどうは秋にはちゃんと実をつけている」というところに着目して、そこからブドウ栽培、ワイン製造というようにスタートしていきました。
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困難を乗り越えて開発された寒冷地向けブドウ品種
困難を乗り越えて開発された寒冷地向けブドウ品種 やはり山ブドウだけだと作れるワインの量が限られてしまうということがあり、本州の品種を導入したりしたこともありましたが、寒冷地なのでうまく育ちませんでした。実がならないまま枯れるなど、失敗の連続でしたが、山ブドウを使って品種改良を重ねることにより、池田町のような寒い地域でも実のなるブドウの品種を開発しました。
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十勝ワインの主力品種 清見・清舞・山幸の特徴と国際認知の道
十勝ワインの主力品種 清見・清舞・山幸の特徴と国際認知の道 主力の品種は「清見」「清舞」「山幸」の3つです。 清見は十勝ワインの中でも一番軽いタイプのライトボディのワインになります。酸がしっかりしていて、十勝ワインの代名詞みたいな存在です。 清舞は清見と山ブドウを交配した品種で、清見に比べると少し重たくはなりますが、酸味も強く感じられ、山ブドウ譲りのコクがある、ちょうど中間に位置するワインです。 山幸は父親の山ブドウ譲りのワインになります。荒々しいやんちゃ坊主ですね。草とか木とか土といった自然な香りと野趣あふれるワイルドな味わいが特徴です。山幸は2020年に「国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V)」に国内では3例目、北海道の独自品種としては初めて国際品種登録されました。
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地域との連携と観光、イベントでの活性化へ貢献
地域との連携と観光、イベントでの活性化へ貢献 十勝ワインは、全国初の自治体が運営するワイナリーです。自治体が運営するということは地域との結びつきが大切になります。ユニークな取り組みとして、町内の中学1年生が毎年授業の一環でブドウの収穫作業を行います。7年後の成人の日に、そのブドウで造ったワインをプレゼントしています。自治体としては全国初のワイナリーということで、地域へのかかわり方もモデルケースとなるよう、努力しています。
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十勝ワインと観光のかかわり
十勝ワインと観光のかかわり 観光面では、ここのワイン城の建物自体が池田町の観光のシンボルであり、丘の上にそびえ立っているので、多くの町民から見える存在になっています。池田町には「道の駅」がありませんが、池田町を訪れる多くの観光客が、ワイン城に足を運び、食事をしたりワインを購入していただいています。さらにイベントを通して町の活性化にも貢献しています。2023年秋には、コロナ禍で4年間中止していた「池田町秋のワイン祭り」が復活しました。名物の「牛の丸焼き」も大好評で、全国から来られた方たちに十勝ワインと一緒に満喫していただきました。
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増えるワイナリーに期待高まる観光の相乗効果
増えるワイナリーに期待高まる観光の相乗効果 今はワイナリーが北海道内でも増えており、十勝にも飲み比べのできる4つのワイナリーができたことは、喜ばしく思います。うちで開発した品種のブドウも栽培していただいていますが、同じ品種でも十勝は広いですから気候や地質が違います。ブドウやワインの味もそれぞれ個性があるものができますから、ワイナリー巡りができる「ツーリズム」も、地域の取り組みとして行っていきたいです。また、帯広市の「北の屋台」でも十勝ワインを取り扱っていただいていますので、観光がにぎわうことにより地域間で得られる相乗効果にも期待しています。
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老舗ワイナリーとしての展望
老舗ワイナリーとしての展望 現存する北海道のワイナリーでは最も古い歴史を持つ、ということで老舗のワイナリーという立ち位置になります。これまでずっと十勝ワインを愛飲いただいてる方がいらっしゃるので、「これまでと変わらない商品づくり」をコンセプトに置きながら、かつ、今までワインを親しんだことのない方でも楽しんでいただける商品展開をしていきたいと思っています。十勝でワイン製造を始めて60年ですが、100年まで頑張りたいです。
十勝ワイン(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
営業課 一戸竜也さん